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この映画面白かったー!

「美」と「グロテスク」が渦巻いてて、もうドストライクでした。

数奇な運命を辿った3人の女の人生を描いてるんですが、ファンタジーな世界のわりに現代女性の心にグサグサ突き刺さります。


1人目は「子どもが欲しくて仕方がない女王」

どうやら不妊なようですが、もう子どもが欲しくて欲しくて仕方が無いわけです。

でもそれは、夫である王様のために生んであげたいとか、一国の女王として国民のために・・・とかではないんですよ。

もう、ただただ「女としてのプライド」なんだと思います。

現に、子どもを授かるためには怪物を倒さなければいけないと魔法使いに言われて、夫がその戦いに挑むのですが、怪物と一緒に死んでしまいます。

でもぜーんぜん悲しんでないんです。

「夫なんてもうどうでもいいんだよ!妊娠できれば私の女としてのメンツが立つんだよ!」って感じですね。


そして、怪物の心臓をむしゃむしゃ食って、めでたく懐妊するのです。

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こわっ!!

この女王は生まれた子どもと上手くいくのか?


答えは、当然上手くいかないわけです。子どもに依存して、ひたすら支配しようとする母親になるんです。

「愛してる」と言いながら、結局は自分の幸せの方が大切なんでしょうね。無意識に。

最後は我が子に殺されてしまいます。


こういうのって、現代でもありますね。

「子どもを産まないと女として不完全だ!!」とか思い込んで、子どもが自分の人生を完ぺきなものにしてくれると思い込む。

こういう依存体質の女の薄気味悪さがとってもリアルに描かれています。


そして2番目の女は「醜い老婆」

とても醜い姉と妹の老婆は、仲良く暮らしていました。

でも、たまたま声がキレイなだけで、姉は女好きの王様に見初められてしまうんです。
(この時点では姿は見られてません)

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結局あとあと姿を見られて「醜い魔女だー!」とか王様に罵られて終わり・・と思ったら、なんと本当の魔女が現れて姉を若い頃に戻してくれます。

それを見つける王様・・・さっきの老婆だとは気付いていません。

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なんてキレイなヒップラインや!

これでイチコロになった王様は、元・老婆と結婚するんです。めでたしめでたし。


・・ではなくて、妹の方はやってられないわけですよ。姉だけ美しくなって。

当然「私も若くなりたい!!」としつこく姉に詰め寄りますが、姉はもう自分が玉の輿に乗ったもんだから妹は邪魔になるんですよね。老婆だってバレたらマズいし。

そして結局妹を捨ててしまいます。

その後、妹は自分も若くなりたくて顔の皮を剥いだりとか、これ以上無いほど悲惨なことになるんですが、もう女としては心臓が痛いですよ・・・。

「なんでお前だけ若返って、玉の輿にのって・・・」っていう。

まあ、最後は姉の方も魔法が溶けてしまって玉の輿生活がおじゃんになるんですけどね。

もう寄り添って生きていた妹もいないし、一度いい目を見てしまったから余計ツラいでしょうね。

結局、これも「玉の輿に乗れさえすれば勝ち組よ!」っていう依存で失敗した話なんじゃないでしょうか?



そして最後の女は「結婚生活に夢見るお姫様」

色々はぶきますが、結局幸せになったのはこのお姫様だけです。

父親の見栄のために怪物のところに嫁がされ、地獄の生活を送りますが、自分で怪物の喉をかっ切って殺し脱出するという夢のない話です。

夫の生首もってご帰還ですよ。

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でも命からがら自分の国に戻ったら、父親はもう死にかけで、お姫様が国のトップになります。

洞窟の中で怪物に犯され、夢見た結婚生活は最悪の結果でしたが、そこから脱出したら素晴らしい人生が待っていた・・という感じでしょうか。


結局、3人の女の明暗を分けたのは「依存」と「自立」ではないでしょうか。

このストーリーに出てくる男はダメ男ばっかりで、理想の王子様は一人もいません。

その中で、自立するために戦ったお姫様だけが幸せを手に入れたというのは面白い結果だと思うのです。

映像美を単純に楽しむのもいいですが、なんだかジェンダーとか、女の幸せのありかたまで考えさせられるような素晴らしい映画でした。

いちおうR-12ですが、そんなグロくないですよ。